住宅流動性と人生設計の経済学

第7回:人生に伴走する社会へ/AIと制度とPropTech-Labが描く未来―前編

目次

PropTechは住宅市場を変える。しかし、PropTechだけでは住宅市場は変わらない。住宅流動性は、社会が人生の変化をどれだけ許容するかの指標である。住まいの自由は、生き方の自由である。そして住まいの自由は、人生の可能性を解き放つ、UNLOCK YOUR POSSIBILITIES.

 

前回(第6回)を受けて:本連載はどこに到達したか

ここまで6回の連載を通じて、本連載は次のように議論を進めてきた。第2回では、AI とは「予測コストの劇的低下」という技術であり、仕事を奪うのではなくタスクを再編成する、という冷静な現実主義を提示した。ソローのパラドックスから AI 時代へと繋がる「技術と社会のビルトイン」の構造を、産業横断の視点から整理した。

 

第3回では、その枠組みを住宅市場に適用し、日本の住宅市場が動かない四つの構造的壁、金融、技術、人口動態、資産観、を解剖した。第4回では、取引の重さの制度的厚みを、AIマップ的な業務分解の視点で測り、PropTech が変えうる領域と変えられない領域を明確に区別した。第5回では、住宅流動性を「人生の自由度」の指標として読み直し、仕事・家族・老後の自由が、住宅市場の構造によってどう制約されているかを描いた。第6回では、AI が住まい選びにもたらす変化と限界を、予測・判断・責任の三層構造として深掘りした。

 

本連載(第7回-前編/第8回-後編)では、論点を二つの方向に広げる。第一に、住宅市場の制度的再設計を、具体的な政策論として提示する。第二に、視点を不動産業から産業横断へと拡大し、建設・教育・医療・経理・金融・行政など、AI が変える社会全体の未来像を描く。そして最後に、PropTech-Labが描く実装ビジョンを、研究と実装と提言と対話の四つの活動軸として総合的に提示する。

 

これまでのすべての議論が本連載(第7回-前編/第8回-後編)に集約される。読者を、住宅市場という一つの市場の議論から、AI 時代の社会全体の設計図へと誘いたい。

 

住み替えを罰しない制度へ、政策論としての中心命題

第3回から第6回までの議論は、繰り返しある一点に収斂してきた。日本の住宅制度は、家を買う人を支援してきた。しかし、家を選び直す人を支援してこなかった。住宅ローン控除、団体信用生命保険、住宅取得資金贈与の特例。
戦後日本の住宅政策の主軸は一貫して「持ち家取得の促進」にあり、住み替えそのものを支援する仕組みは、ほとんど整備されてこなかった。

 

これからの政策論の中心命題は明確である。購入促進政策から、居住選択の可逆性を支える政策へ。具体的には、次の七つの領域で制度の再設計が必要となる。

 

1. 住宅ローン控除の住み替え中立化

現行の住宅ローン控除は、最初の取得時に13年間適用される。途中で住み替えると、新しい家のローンに対して再度控除を受けることはできるが、通算で享受できる期間や額には実質的な制限がある。これは事実上、「最初の家に長く住むほど得」という構造を作り出している。

 

提案するのは、控除の権利を世帯のライフタイムに紐づける形への転換である。ある世帯が生涯で支払う住宅関連費用に対して、トータルで一定の控除枠を与える。住み替えても控除は減らないし、住み続けても増えない。これによって、住宅金融が住み替えを罰する構造が解消される。

 

2. 団体信用生命保険の年齢中立化

団信は、住宅ローン契約者の死亡時にローン残高をゼロにする保険である。その保険料率は年齢に依存し、住み替えによって新規契約を結び直すと、年齢上昇分の保険料が乗ってくる。55歳での団信加入は、35歳での加入より2倍以上のコストになることもある。これが住み替えの「年齢ペナルティ」として作用する。

 

提案するのは、団信の保険料を一括で世帯の生涯リスクに対して計算する仕組みへの転換である。個人が団信を「移籍」できる仕組み、あるいは団信に代わる新しい信用保証スキームの設計が考えられる。これは保険業界、銀行業界、税制当局の三者協調が必要な改革であり、容易ではない。しかし避けて通れない課題である。

 

3. 登記・決済・エスクローの再設計

第4回で論じたように、日本の住宅取引の重さは、信頼を個別の人間関係(仲介業者・銀行・司法書士・保険会社の暗黙の協調)に依存していることに由来する。米国型のエスクロー、英国型の Conveyancing 制度を参考に、信頼を制度に集約する方向への再設計が求められる。

 

具体的には、第三者機関による資金エスクロー、権原保険による登記の連続性保証、電子契約と電子登記のシームレスな接続、決済日の物理的集合の解消。これらを総合した「住み替えプラットフォーム」の構築が、PropTech-Lab の実装目標の一つである。

 

4. 建物価値を残すための住宅履歴情報

中古住宅市場の薄さの根源には、建物価値が時間とともにゼロに近づくという制度がある。木造22年、鉄筋47年という法定耐用年数は、税務上の便宜のための数字であって、実際の建物の物理的な寿命とは大きく乖離している。丁寧にメンテナンスされた家もそうでない家も、市場では「築○年」というだけで一括評価される。

 

提案するのは、住宅版のCarFaxである。建物の建築履歴、リフォーム履歴、修繕履歴、設備更新履歴をデジタルで一元管理し、売買時に買い手が容易にアクセスできるようにする。これにより、「履歴のある家」は「履歴のない家」よりも高く評価される市場が生まれる。所有者にメンテナンスのインセンティブが生じ、中古住宅の価値が育つ。これは技術的には十分可能であり、課題は標準化と普及のための制度設計である。

 

5. 空き家・相続不動産を市場に戻す制度

2023年時点で約900万戸ある空き家のうち、相当部分は「動かしたくても動かせない」相続不動産である。相続によって取得したが住まない、貸せない、売れない、解体すれば固定資産税が上がる。こうした「負動産」を市場に戻す制度が必要である。

 

具体的には、相続放棄ではなく相続後の早期処分を促す税制優遇、空き家バンクと民間ポータルの統合、所有者不明土地の処分手続きの簡素化、解体後の更地への固定資産税優遇。これらを総合した政策パッケージが必要である。本連載(第7回)後半で論じる空き家対策の実証実験は、その第一歩である。

 

6. 住宅流動性を高めるDXの加速

2022年5月の宅建業法改正による書面の電子化は、重要な第一歩であった。しかし第4回で論じたように、紙を PDF に置き換えるだけなら、旧来の取引儀式を画面上で再演しているにすぎない。真の DX とは、誰が情報を持ち、誰がリスクを負い、誰が判断するのかを組み替えることである。

 

具体的には、レインズの消費者向け開放、AVM の標準化と精度公開、ホームインスペクションの義務化または推奨制度、住宅履歴情報の登録と参照のインフラ化、全国版空き家バンクの民間ポータルとの統合運用。これらは技術的には実現可能であり、必要なのは政策的な意志である。

 

7. 住み替え中立社会への10年ロードマップ

これら六つの改革を、10年のスパンでどのように進めるか。PropTech-Lab が描くロードマップは、おおよそ次のようになる。

 

1~3年目(基盤整備期):
住宅履歴情報のデジタル標準化、AVM の精度公開ルール、書面電子化の運用定着、空き家データの自治体間共有。

 

4~7年目(制度改革期):
住宅ローン控除の住み替え中立化、団信の改革、建物耐用年数制度の見直し、登記制度のオンライン化、空き家対策法のさらなる強化。

 

8~10年目(社会実装期):
住み替えプラットフォームの全国普及、中古住宅流通シェア30%超への到達、空き家率の安定化、世代間の住宅ストック循環の本格化。

 

これは野心的な計画である。しかし、これくらいの時間軸で動かなければ、日本の住宅市場は構造的な硬直性から抜け出せない。そして、技術はその先行指標となる。制度が後追いし、文化がさらに後追いする。この三層が揃って初めて、住宅市場は動く。

 

産業横断のAI社会論、不動産から見えてくるもの

ここから、視野を住宅市場の外へと広げる。本連載は住宅市場をめぐる議論であるが、第2回で示したように、AI とタスク代替の経済学は、あらゆる産業に共通する構造を持つ。住宅市場で見えてきたものは、他の産業でも形を変えて現れている。ここでは六つの産業を取り上げ、AI 時代の社会変革の見取り図を描く。

 

建設業、生産性停滞からの脱却

建設業は、過去30年間ほとんど生産性が改善していない産業として知られる。MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究によれば、その大きな原因の一つは建築素材の制約である。建築または建設の技術が進化しても、材料の制限によって生産性向上に天井がかかる。

 

MITでは、形・色・テクスチャが変化する将来の建築材料、自由な形状・特性に加工できる材料の研究が進められている。これに3Dプリンターでの建築技術が組み合わされれば、建設業の生産性は跳ね上がる可能性がある。

 

加えて、現場へのロボット導入が期待されているが、機能性とコストパフォーマンスの両面で実用までには時間がかかる。日本では、人口減少と労働時間規制の強化により、建設業の労働賃金が最も上昇している。労働節約のための AI とロボットの導入は、もはや選択肢ではなく必然である。ここでも、AI マップによるタスク分解と、技術と制度の同時進行が鍵となる。

 

教育、「平均」から「分散」へ

第2回で論じた教師の例は、ここで再度詳述するに値する。従来の教育システムは、一定数の生徒を対象とするクラス運営を前提に組み立てられていた。教師の役割は、専門知識・技能を持ち、クラス全体としての「平均」的な学力を高めることであった。

 

AI を具備した教育教材が発達し、各生徒の個別性に配慮して学習進度や難易度をコントロールできるようになると、評価軸は変わる。「平均」よりも「分散」が重視されるようになる。飛びぬけて高い能力を持つ生徒を伸ばし、学習についてこられなくなった生徒に寄り添う。教師は知識伝達者から、学びの伴走者へと役割が変化する。

 

これは教育産業全体に波及する変化である。塾、通信教育、大学、企業内研修。すべての教育機関が、AI と人間の分業設計を求められている。そして、教師という職業は消滅するのではなく、人間にしかできない寄り添いの専門家として再定義される。

 

医療、診断補助と意思決定支援

医療分野でも、AI の応用は急速に進んでいる。画像診断(レントゲン、CT、MRI、病理)における AI の精度は、多くの領域で人間の専門医と同等またはそれ以上のレベルに達しつつある。創薬、ゲノム解析、リスク予測、治療計画の最適化など、予測タスクの応用範囲はきわめて広い。

 

しかし、ここでも予測・判断・責任の三層構造が決定的に重要である。AI が画像から疾患を予測しても、最終的に治療方針を判断するのは医師である。治療結果の責任を引き受けるのは、医療制度全体である。医師の仕事は「診断者」から「判断者・伴走者」へとシフトする。

 

患者にとっても、AI の助言を踏まえて自分の人生を選び取ることが求められるようになる。これは医療の民主化であると同時に、患者側の判断力への要求の高まりでもある。住宅選びと医療選びは、いずれも人生の根幹に関わる選択であり、AI 時代の意思決定の構造はきわめて似通っている。

 

経理・人事、倫理性とコミュニケーション

第2回で論じた経理職員の例は、ホワイトカラーの仕事全般に当てはまる構造である。経理、人事、総務、法務、企画、これらの職種でAI が代替するのは、データ集計、書類作成、規則適用、初期スクリーニングといった予測的・反復的タスクである。人間が引き続き担うのは、社員とのコミュニケーション、組織内の調整、判断のための情報提供、倫理性を持った組織運営である。

 

このシフトは、採用基準と評価制度に大きな変化をもたらす。従来は「正確な処理能力」が重視されたが、今後は「コミュニケーション力」「倫理性」「複雑な状況での判断力」が中心になる。
日本企業の人事評価制度は、この変化への対応が遅れている領域の一つである。

 

金融、審査と倫理

金融業界では、AI を使った審査の自動化が急速に進んでいる。住宅ローン、消費者ローン、保険引受、投資判断。予測技術としての AI は、リスク評価の精度を大きく高める。

 

しかしここで重要な問題が浮上する。キャシー・オニールが Weapons of Math Destruction(2016)※で警告したように、AI による意思決定が既存の社会的不平等を再生産するリスクである。過去のデータに偏りがあれば、AI はその偏りを学習して再生産する。ある属性の集団が過去に差別を受けてきた場合、その集団に対する審査は無自覚に厳しくなる可能性がある。

 

金融におけるAI の応用は、とりわけ住宅市場と深く接続される。住宅ローン審査は、AI が最も早く広く普及する領域の一つである。ここで責任の所在を明確にし、説明可能性を担保し、公正性を制度で保証する。これが AI 時代の金融制度の核心となる。

 

行政・公共サービス、DXの最前線

行政分野でのDXは、本連載が一貫して論じてきた住宅市場の制度改革と直結する。書類のデジタル化、申請のオンライン化、住民データの連携、AI を使った予測(税収見通し、福祉需要、災害リスク)の活用。日本の行政DXは、諸外国に比べて遅れているが、人口減少下での行政サービス維持のために、加速が不可避である。

 

次節で論じる空き家対策の実証実験は、行政DXとAI活用の典型的な事例である。固定資産税台帳、住民基本台帳、電力スマートメーターのデータを連携させ、空き家の特定から所有者の意思確認、市場への接続までを一気通貫でつなぐ。これは住宅市場の改革であると同時に、行政サービスの再設計でもある。

 

空き家対策に学ぶ「人間と機械の分業」の実践

これら産業横断の議論を、最も具体的な事例で締めくくりたい。それは、筆者が長年取り組んできた空き家対策の実証研究である。住宅市場の流動性問題が最も鋭く現れる場所であり、AI と人間の分業が現実の社会課題に適用されるケーススタディでもある。

 

空き家流通の困難さ

空き家流通には、通常の不動産流通とは異なる難しさがある。2015年の空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)の施行以降、各自治体が空き家対策に取り組んでいるが、空き家・空き地は依然として増加し続けている。

 

困難の核心は、住宅売買仲介の業務工程が、空き家の場合に経済的に成立しにくいことである。清水・西村・浅見(2004)※で示したように、住宅売買仲介の業務は29工程に分解でき、そのうちコストが大きく集中するのは、集客、物件調査、価格査定の三つである。紛争リスクの約7割は物件調査に由来する。

 

価格が低い、または無価値化している空き家の場合、仲介手数料の上限(売買代金の3%+6万円。2024年7月から800万円以下の物件については30万円の1.1倍を上限とする改正がなされた)では、これらの工程をカバーする収益が得られない。宅地建物取引士が空き家流通から撤退する経済的な理由がここにある。

 

知能を持った機械が空き家対策に貢献できる三領域

ここで、データサイエンスの技術が、空き家流通のコストをどこまで下げられるかが問われる。筆者らの研究グループは、次の三領域で実証研究を進めてきた。

 

第一の領域:空き家の特定。
従来の自治体による外観調査では、調査時点では空き家でも時間の経過とともに解消されたり、逆に居住者がいたものが空き家になったりする。動態的な空き家の特定は、コストが高く精度に限界がある。

 

そこで、馬場・秋山・清水(2022)※では、電力スマートメーターのデータを活用し、群馬県前橋市において空き家の空間分布を測定した。スマートメーターは30分ごとに各戸の電力使用量を受信できる。家電の待機電力が一定期間にわたって超えないような住戸を空き家として特定し、4次メッシュ単位(約500メートル四方)で集計した。これにより、6カ月以上空き家、11カ月以上空き家といった時間分布を可視化できる。これは知能を持った機械が、自治体職員では困難なタスクを代替する典型例である。

 

第二の領域:価格査定の自動化。
住宅の価格査定は、機械学習・データサイエンスの予測問題において典型的な教材であり、古くから多くの研究や予測精度を競うコンテストが開催されてきた。技術的には十分成熟している。

 

しかし物件調査では、確率変数ではなく確定変数として誤差のない数値が要求される。この誤差が紛争に直結するためである。このタスクが機械によって代替されれば、空き家バンクへの登録だけでなく、日本の不動産流通コストを飛躍的に低下させることが可能となる。筆者らは現在、物件調査にかかる費用構造を解明する研究を、国土交通省、香川県高松市、民間事業者と共同で実証実験を実施している。

 

第三の領域:マッチング。
空き家バンクにおける売却希望物件と、買い手・利用希望者とのマッチングは、都道府県を超えた広域移動の促進が必要となる。通常の住宅購入者は半径5キロメートル以内にとどまることが知られているが(佐藤ほか, 2018)※、空き家対策における移住は、より広域のマッチングを要する。

 

そこで筆者らは、街の特性を得点化したWalkability Indexを開発した(Shimizu et al., 2014; 清水ほか, 2020)※。歩行可能な範囲にスーパーマーケット、コンビニエンスストア、公園、飲食店、カフェなどのアメニティがどの程度集積しているかを計測する指標である。ジェイン・ジェイコブズが The Economy of Cities(1969)※で論じたように、都市はさまざまな人が集まり交流が生まれる場であり、シカゴ大学のテリー・クラーク(2004)※が指摘したように、創造的な人材は経済的側面よりも文化的アクセスを重視して居住地を選ぶ。Walkability Index は、こうした街の魅力を数量化し、広域マッチングの判断材料を提供する試みである。

 

自治体DXのショーケースとしての空き家対策

これら三つの領域での技術応用は、それだけでは社会実装にならない。重要なのは、技術を生かすための制度整備、官民データ連携、人材育成の三位一体である。

 

電力スマートメーターの活用には、2020年6月の電気事業法改正2022年4月の施行規則整備、空家特措法改正による電力データの市町村提供の制度化が必要であった。固定資産税台帳・住民基本台帳との照合による所有者特定にも、空家特措法改正が前提となった。技術と制度は同時に動かなければ、実装は実現しない。

 

筆者らは、岐阜県大垣市、大阪府池田市、広島県尾道市、香川県高松市で実証実験を進めてきた。そこから見えてきたのは、空き家対策が単なる住宅政策ではなく、自治体DXの最前線であるということである。官民データ連携、AI活用、専門人材育成、住民との対話。これらすべてが空き家対策に集約される。

 

国土交通省の「空き家対策モデル事業」に採択された「空き家再生プロデューサー育成プログラム」では、専門人材の育成のためのカリキュラム開発とスクーリングを実施してきた。プログラム終了後には、修了生たちが一般社団法人地域未来創造大学校次世代街づくりスクールを設立し、専門人材の育成を継続している。

 

これらの取り組みは、各企業のDX推進においても応用可能である。公共サービスを含む社会全体の生産性を高めていくためには、人間と人間の分業から人間と機械の分業へ、さらには機械と知能を持った機械の分業へと発展させていく必要がある。人間と機械が正しく共存できる社会を実現するために、社会科学としての法律学、社会学、経済学などとデータサイエンスの融合がますます求められる。

 

まとめ

ここまで、日本の住宅市場が抱える構造的な壁から始まり、その壁を打ち破るための制度再設計、さらには不動産業の枠を超えてあらゆる産業へ波及するAI社会の未来像、そして空き家対策という現実の課題における「人間と機械の分業」の実践について論じてきた。

 

テクノロジーと制度、そして社会科学の融合がもたらす変革の兆しは、すでに私たちの目の前にある。では、これらを統合し、社会に具体的にどのような未来を実装していくべきなのか。

 

続く後編では、これまでのすべての議論の集大成として、PropTech-Labが描く「4つの活動軸」を通じた社会実装のビジョンを提示する。そして、テクノロジーによって読者一人ひとりの人生の可能性をどう解き放つか、本連載の結びとなるメッセージをお届けしたい

 

 

濱中 雄大(株式会社property technologies 代表取締役社長/PropTech-Lab 主宰)
清水 千弘(一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科 教授/PropTech-Lab所長)

 

【参考・引用文献】

  • O’Neil, C. (2016). Weapons of Math Destruction. Crown Publishing.

  • 清水千弘・西村清彦・浅見泰司 (2004).「不動産流通システムのコスト構造」『季刊住宅土地経済』No.51, pp.28–37.

  • 馬場弘樹・秋山祐樹・清水千弘 (2022).「スマートメータを利用した空き家期間と地域特性との関係分析、群馬県前橋市を対象として」『GIS、理論と応用』30(1), 30–39.

  • 佐藤英人・清水千弘・唐渡広志 (2018).「最寄駅徒歩圏居住に向けた中古集合住宅の役割、2000年代の東京大都市圏を事例として」『人文地理』70(4), 477–497.

  • Shimizu et al., 2014; 清水ほか, 2020

  • Jacobs, J. (1969). The Economy of Cities. Vintage Books.(中江利忠・加賀谷洋一訳『都市の原理』鹿島出版会, 2011年)

  • Clark, T. N. (2004). The City as an Entertainment Machine. Emerald.

清水 千弘

PropTech-Lab所長

一橋大学大学院ソーシャルデータサイエンス研究科教授、社会科学高等研究院都市空間不動産解析研究センター・センター長。1994年 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程中退。東京大学博士(環境学)。財団法人日本不動産研究所研究員、リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学教授、日本大学教授、東京大学特任教授等を歴任。
2022年1月より、当社グループ参画。社外取締役を経て、2024年7月より、当社研究・開発組織『PropTech-Lab』所長に就任。

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