空き家の「見えないコスト」に要注意!『相続空き家の3,000万円特別控除』の活用法

目次

「相続した実家、誰も住まないけれど、手放すのも気が引ける」
「とりあえず空き家のままにしているが、これでいいのか不安」

 

こうしたお声は、相続のご相談でよく聞かれます。

 

実は近年の法改正で、空き家を放置したままにするリスクは以前より大きくなってきていると言われています。今回は、将来後悔しないために「空き家」の最新事情と合理的なしまい方をキャッチアップしておきましょう。


なぜ今、「空き家」が問題になっているのか?

 

全国で空き家は増え続けており、人が住まず管理もされない家は、防災・防犯・景観などの面で社会的な課題になっていると言われています。背景には人口減少や高齢化に加え、相続をきっかけに使われなくなる家が増えていることがあるとされています。

 

「いつか使うかもしれない」「親が大切にした家だから」と置いたままにしているうちに建物が傷み、気づけば選択肢が狭まっていた、というケースも少なくありません。

 


放置するとどうなる?「特定空家」と「管理不全空家」に注意

 

2023年の法改正により、従来の「特定空家」に加えて「管理不全空家」という区分が新設されました。これにより、これまでより早い段階で行政の指導・勧告の対象になり得ると言われています。

 

もし行政から勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする仕組み(住宅用地特例)から除外され、税の負担が大きくなるケースがあるとされています。さらに状況によっては、命令や行政代執行(行政が強制的に解体し、その費用を所有者に請求すること)に至る可能性もあると言われています。

 

また、関連する政策として「相続登記の申請」も義務化されています。不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請をしなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となり得ます。名義を曖昧なまま放置することは、制度的にも非常に不利になりやすいのが現状です。

 


決断を鈍らせる「心理的な罠」と「見えないコスト」

空き家の処分を先送りしてしまう最大の原因の一つに、「昔建てたときに3,000万円かかった」「リフォーム代を出したから手放すのはもったいない」という過去の費用(サンクコスト)へのこだわりがあります。

 

しかし、これからの最適な意思決定において重要なのは「過去にいくらかかったか」ではなく、「今日から先、いくらかかるか/いくら入ってくるか」です。

 

空き家は誰も住んでいないため「住む便益」がほぼゼロである一方、固定資産税や管理費、建物の劣化といったコストは毎月発生し続けます。いわば、目に見えにくい「負の家賃」を毎月払い続けている状態と同じなのです。過去の感情と未来のコストを切り分けることが、賢い選択への近道となります。

 


未来の負担を最小化する「4つの選択肢」

 

空き家への向き合い方は、放置するか手放すかの二択ではありません。大きく「住む・活用する」「貸す」「売る」「解体する」といった選択肢があります。それぞれにメリットと注意点があり、立地や建物の状態、ご家族の状況によって向き・不向きは変わります。

 

まずは「自分の家の場合はどれが現実的か」を知ることが、第一歩になります。

 


売却を考えるなら知っておきたい税制の特例

 

相続した空き家を一定の要件のもとで売却した場合、譲渡所得(売却益)から一定額を差し引ける特例(いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」)が設けられているとされています。条件に当てはまれば、税負担を抑えられる可能性があります。

 

ただし、建物の建築時期や耐震基準、売却の期限など細かな要件があるとされ、使えるかどうかは事前の確認が欠かせません。利用を検討する場合は早めに調べておくとよいでしょう。

 


トラブルを防ぐためのファーストステップ

いきなり「売る」「貸す」と決める必要はありません。まずは現状を冷静に「棚卸し」することから始めましょう。

 

  • 権利関係の確認: 誰が決める家なのか(名義や共有の有無)
  • 建物の状態の確認: 雨漏り、倒壊リスクなどの有無
  • コストの把握: 固定資産税、管理費、遠方への交通費など、今後かかる年間コストの算出
  • 市場性の確認: 周辺の需要や相場

 


まとめ

  • 近年の法改正により「管理不全空家」も対象となり、空き家を放置するリスクや社会的コストは高まっています。
  • 指導・勧告が進むと固定資産税の負担が増えたり、状況によっては行政代執行に至る可能性もあるとされています。
  • 出口は「住む・貸す・売る・解体・譲る」など複数あります。過去の費用(サンクコスト)にとらわれず、将来の総負担を専門家と相談しながら現状確認を進めることが安心につながります。

 

「まだ大丈夫」と思っているうちが、実は動き時かもしれません。まずはご実家の空き家の現状を確認することから始めてみませんか。

 

適用に際しての具体的な注意点 

・上記は令和8年6月末時点の適用法令

・通達等に基づき記載しております。

・上記事例等は一例であり実際に適用する場合にはご自身が適用要件を満たしているか専門家等にご確認の上適切にご対応頂きますようお願い致します。

・本記事の記載内容にあてはめて適用することを保証するものではありませんのでご留意願います。

 

※本掲載内容は、情報提供を目的とし掲載時点の法令等に基づき掲載されており、その正確性や確実性を保証するものではありません。本掲載内容に基づくお客様の決定・行為およびその結果について、当社グループは一切の責任を負いません。最終的な判断はお客様ご自身のご判断でなさるようにお願いします。なお、本掲載内容は予告なしに変更されることがあります。

編集・執筆/property technologies 永江 直人

大谷 修太

齋藤久誠公認会計士・税理士事務所

2012年にみずほ銀行へ入社後、2014年みずほ信託銀行へ出向。
2024年まで相続・事業承継・不動産を専門とするコンサルタントとして毎年100家族以上のご相談に対応。現在は独立し「相続や事業承継で経済的に不幸になるご家族を一人でも減らしたい」という理念のもと、幅広い層の皆さまに最適なソリューションを提供。

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